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Blueに続いて、おすすめの「絶叫」葉真中 顕 の小説を読んでみました。
話の順番的には、「絶叫」➡「Blue」の順番が宜しいと思います。
出てくる刑事が同じなので。
そして、よく似たタイトルの湊かなえの本は「絶唱」なのです。こちらはまた今度感想を書きます。
ちなみに漫画にもなっています。
「絶叫」3行あらすじとネタバレ
引き続き読んでしまうほど文章がうますぎる。そして葉真中顕のすべてをコンプリートしたい欲に駆られてしまう。
やばい。次は「ロストケア」を読もう!
「絶叫」のあらすじとネタバレ
生活保護費を搾取するNPO法人という名の「囲い屋」代表が殺される。
そして同時に囲い屋のグループの中の一人の女が姿を消すが、グループの人たちは誰もその女の名前すら知らずに囲い屋のシェアハウス一緒に暮らしていたのでした。
事件から半年ほどして、東京のある部屋で女の孤独死が発見される。
多頭飼いされていた猫にほぼ体を食べられた状態で。
ここからその女の生まれてからの人生を語りだすが、どいつもこいつも『幸せ』になるためにがんじがらめになり、幸せとは程遠い所で踏ん張っているバランスを崩した家族であり、女も例外なく幸せに囚われた一人の悲しい女なのです。
母は自分の都合ばかりを押し付け、自分の理想論を叶えてくれそうな弟ばかりに夢中。
なぜなら弟はかなり頭が良いから。
でも弟は今でいう所のアスペルガーであり、壮絶なイジメに合っていた。
アトピーや体の弱さからの運動が苦手という昔のいじめられっ子のテンプレートのような存在でした。
ある日、弟は自殺してしまいます。
それまで弟にだけ愛情を与えてきた母は少し壊れて(元から?)しまいました。
母は父にも理想論を掲げており、無神経に押し付けていました。結婚して子供を産んで、一軒家に住んでいることだけ、周りと同じように進んでいく事だけが母の幸せなので父は空気です。
ようは母親の人生のコマでしかありません。この辺湊かなえと同じような皮肉さで抉ります。
娘の話も同じ場所まで降りて共感するでもなく、聞いたようなふりをしてせせら笑うか、残酷な事を言うだけでした。
女が大きくなると、雑誌に出てくるような東京での生活に憧れ始めます。しかし地元で就職し、腰掛の仕事をし、このまま平凡に朽ちて行くのか・・・と思いきや、父が「いわゆる財テク」の負債で逃げます。
一軒家は取り立てられ、母は実家に帰りますが女は連れて行きません。
この時に母の事を完全に見切った女。
その後地元で一人暮らしをしている時に、漫画家と結婚し夢だった東京暮らしが始まりますが、漫画家はアシスタントと浮気し子供ができて女と離婚し、女はそのまま東京で一人暮らしをします。
コールセンターの派遣をしながら地味な毎日を続けていますが、ある日、転職を決意しハローワークに行った所で保険のセールスレディに誘われ、「月収40万」に惹かれ、まんまとセールスレディになります。
その後、身内を食いつぶしながら「仕事ができる私」と勘違いをしつつ、枕に転落するのもセールスレディのテンプレートです。
保険の仕事を首になるころには、あの母親が生活保護を申請し、連絡を受けた女は役所に母に仕送りをすると言い切ってしまっており、枕営業も自腹での保険加入もパンク寸前であった。
当然パンク。自爆もバレ保険レディすらも首。
しかし、一度味わった「高給取り」から元のみじめな生活には戻りたくないと思う女は、その後風俗を始める。この時36歳である。
風俗をしながら心の拠り所をオラオラ系のホストにし、テンプレート通りせっせと貢ぎます。
ホストはそのうちヒモになり、女に暴力を振るっては甘えることを繰り返し、当然のようなクズができあがっていきます。
「意思は降って来る」弟が降って沸いたように自殺したように、流されて生きて来た女にもまた突然意思が降って来た。
『クズと別れて金に変えるーーーーーー。』
という強い意思が(笑)
一方で、囲い屋はホームレスを狩りつつ、明け方のデリヘル狩りに精を出しています。
殺してもいいような女を捕まえて、嫌がる所を犯すのがいいらしい。嫌がらなければ首を絞めて、なんなら死んでもいいから女の本能や生きる執念を見たいらしい。
ボスは変態なので、突然さらわれて犯されて殺されそうになっているというシチュエーションがいいそうです。やられてるほうはたまらんが。
その囲い屋のボスと「デリヘル狩り」にて知り合います。犯され殺されそうになりつつも、ボスに「いい話がある」と持ちかけ、保険金詐欺を持ちかけます。
弟の事故死×保険の知識×女、残りは実行してくれる人だけを探していたのでピッタリでいて、まさに運命的な出会いでした。
そうして女と囲い屋のボスはタッグを組みます。ホストはそれはそれは綿密に殺されます。
ホストが泥酔していたところをトラックで頭を踏みつぶし、寝ていた人を踏むなんて不可抗力もいい所なので運転手も罪には問われず、保険金1億を貰い、味を占めた二人は、次々と囲い屋で飼っているホームレスのひとりと女を結婚させ実行していきます(本人は知らないまま)。
口封じのために、殺した運転手と半年後に再婚させて、また殺して保険金を受け取るということを繰り返します。
これは考えていると思う。殺して行くので、人殺しの口封じしないといけないのは実質一人だけになるんだもん。
ご丁寧に旦那の本籍地に移動し、本籍地に引っ越すことで同じ方法でも警察の目を潜り抜けた兵であり完全犯罪でした。
女が死んでからはバレたから、完全犯罪ではないのかもしれないけど。と思うのは甘い。ちゃんとオチがある。
そうして囲い屋のボスを手玉に取って、次々と完全犯罪を犯して行くがどっぷりと沼にはまりっぱなしで終わる女ではなかった。
囲い屋のボスは尼崎事件の女みたいな感じですね。
女は3人目を殺した後、4人目の結婚相手になる男(2回目の結婚からは本人には秘密で勝手に籍を入れていた)に「一緒にボスを殺しちゃおう☆協力してね!でないと、あんたも殺されるから」と持ち掛け、男にボスとの情事の途中に後ろからスタンガンを打たせて、その隙に女はボスを日本刀で滅多刺し!
女は一年前から用意していたマンションと車、そしてボスが隠していた金のありかから金を盗みホームレスの男とは別々に逃走する。
『こんな人生からリセットしてやるーーーーーー』
という強い意思があり、更に上行く綿密な計画を実行する。
ボスを殺す前に、風俗の時に一緒に働いていた天涯孤独の女「すみれ」がへその緒を持ち歩いていた事を思い出しており、友達っぽく見せかけてたまに会って風俗嬢の状況を確認したりしていた。
そして落ち着いたころ、その女をマンションに連れ込み殺して、その女として生きて行く。戸籍もきれいにリセットだ。
「本物の女」はこの事件が明るみになってDNA鑑定された時にヤバいので、仕送りしていた母親の家に置いて警察に見つかるように「すみれ」のへその緒を置き、ボケた母親を連れ出して殺して裸にして谷底に捨てました。
微生物が分解してくれるのでこの犯罪に関わっている「本物の女」のDNAが出ない以上、女の母親だとはわかりません。
仮にたどり着いた所で、母親の所にある「すみれ」本体のDNAであることしかわからないので、「すみれ」のDNAを女のDNAにすり替えたのです。
本物の女のDNAごと、「すみれ」に擦り付けてDNA込み、戸籍込みで見事に入れ替えです。
その後、逃げた父がホームレス狩りに合い殺され、運転免許証から女の父だと思われますが「すみれ」の臍の緒のDNAが邪魔をして、親子関係は決定付けられませんでした。
父親が持っていた免許証は、拾ったりしてたまたま持っていたものだと警察に断定されてしまいます。
「金もあるし、整形して新しい私☆」を手に入れた女は、美しい自然現象にたどり着くためスタートを切ります。
(そうよ、女はいつからでもリセットできる(笑))
おしまい!
「絶叫」 葉真中 顕の感想
面白かった。非常に面白かった。
やられっぱなしの特に何もない女が、まるで極道の妻並にのし上がっていく様子が特に面白かった。
掃きだめのような場所の描写も良かった。ボスである神代の描写も良かった。神代もその仲間たちも、こんな奴居る!となるような人のせいにしてばっかりの男たち。
もちろん、身代わりなった風俗嬢も「こんな話し方の女、居るわ!」となるような…なんというか軽いのりの。多分辛い目に合ってきたからこその愛嬌や軽さなんだろうな。
Blueに出てくる刑事が出てくるんだけど、こっちの話も面白い。あんな育ちのいいおぼっちゃまと刑事の女が結婚して上手くいくわけがない。
サラサラと滑り落ちる上っ面の言葉しか吐かない男と一緒にやっていけるのは、同じように汚いものを直接触らず、偽善の気持ちだけを相手に押し付けて自己満足だけしているような、自己保身しか考えてない流行りものが好きなペラペラの女だけだろう。
刑事も割り切って相手にしなけりゃよかったのに。「私は私」と思って自由にやってりゃよかったのに。(まあでも細かく口出してくるんだろうな。言っても理解しない、できないくせに)刑事の方にしたたかさが足りなかったのか、世間知らずで純粋すぎたのか。それとも我慢できなかったのか。
REDの旦那みたいじゃん。
かといって、こだわりの強すぎるコテコテの男も嫌いだけど。
個人的には、「絶叫2」として女の続編(ミスバイオレットまでの人生)を見たい気もするけど、とりあえずは「絶叫」で大満足です。
最後に、自分がこの話に出てくるとすれば、地震の時にアパートから出た時に会う隣のおばちゃんかな(笑)