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なぜこの映画を見ようと思ったのか分からないけど原田美枝子と書いていたので手に取ったのだろう。見たら当時かなり衝撃的だった。タイトルからは想像もできない位。
2017年にスペシャルドラマとして篠原涼子が演じたのも見た。
けどやっぱり映画の衝撃はすごかった。こんな母親がいるんだという衝撃と虐待と存在の無視というやりたい放題の身勝手すぎる母親の姿に衝撃を受けた。(昭和20年~30年代の話です)
愛を乞う人の3行あらすじとネタバレ
注意※三行で結末まで書いてます。
こんな主人公だからこそ、自分もシングルマザーで負の連鎖を感じずにはいられないが自分の娘には愛を注ぎ、娘がまっすぐに育っているのが救い。
できるだけ心に余裕のある時に怖いもの見たさで見て欲しい。
愛を乞う人映画のネタバレと感想
この映画は過去と現在を行き来するストーリーです。
現在、主人公照恵はシングルマザーで娘を育てています。
娘がある程度大きくなった(すごくしっかりした中学生)時、ふと父親の遺骨を探そうと思い立ちます。
照恵がそれまで突っ走ってきた人生を振り返る丁度いいタイミングだったのかも知れません。
娘に自分の親の事を話すのは初めてに等しい位に言ってませんでしたが、この際話しておくことにしました。しかしそれは鬼のような忘れたい記憶の母までもセットで話しなければいけないのでした。
照恵はようやく気持ちの整理をして話しだします。
・・・母は照恵に壮絶な虐待をしておりました。母親は思うように生きてきた人物で、たまりかねた台湾人の父が照恵を連れ出し、母が罵詈雑言を浴びせている所から映画が始まります。
照恵の体には母からの虐待の跡がいまでも多数残っています。
そうやって連れ出した父は照恵を引き取ると間もなく亡くなってしまいます。
その父の遺骨を探したいのでした。
・・・と言えば聞こえはいいけど、弟が詐欺罪で捕まって警察が来たり帰りが遅くなった母を心配した娘が問い詰めただけなんだけど。
弟も当然ろくでもない人生を歩んでいるのだった。
弟ともなん十年と会ってなかった照恵は、弟の実父や養父の遺骨は見つけてあることを弟に伝えます。(母は何度も再婚していた)
娘は母に弟が居たことすらも知らなかったのでした。照恵が隠していたからです。
照恵はその後昭和三十年まで施設で幸せに暮らしていました。しかしある日、鬼婆(母)が迎えに来て幸せが終りました。
鬼婆の家に着くと新しいお父さんと、見たことのない弟が増えていました。
鬼婆は迎えに来たものの、育児放棄もいい所です。
何時であろうが情事が始まると子供たちをそのまま外に放り出してカギを閉めました。ちなみにバラック小屋のような家。
そうやって照恵が10歳になると、二番目の夫と別れて今度はまた新しい彼氏の家に照恵たち子供を連れて居座りに行きました。鬼婆は照恵に暴力三昧で厳しすぎる折檻を繰り広げてアイロンを体に押し付けたりとやりたい放題。
始めこそ鬼婆の彼氏も止めてたけど放置まで時間はかからなかった。新しい彼氏の家は家というよりも昔のアパートで炊事場も共同の狭い家なんだけど誰も止めないんだよね。時代が時代なのかもしれないけど今ならだれかがすぐに通報するレベル。誰も通報しなくても私がやるわ!
ちなみにこの家は引揚者定着所という場所で、戦争とかで引き揚げてきた人たちの集合住宅なのでした。
まあどの生活も一貫して貧乏です。貧乏から抜け出せるような男が子連れのシングルマザーを選ぶようなシンデレラストーリーなんてないし、貧乏な男でも一緒に居たい母なのか、貧乏が好きなのか抜け出せないのかは謎ですが、とにかく貧乏で母親はずーっと水商売を続けていました。父も一貫してヒモっぽい。
大きくなった照恵が少しの小遣いをねだるとタバコを押し付け、中学の制服を男が買ってくれたから礼と目の前で裸になって着替えろなんて、少女葬の貧困少女を思い出した。
激しい暴力の末に、照恵は鬼婆に「施設から引き取ったのは私がかわいかったからじゃないのか!」という。
(ここ、かわいかったから風俗に行かせて金にしようと思った?なんてゲスの勘繰りしてしまうけど、たぶん映画の中では自分の子供がかわいいから引き取ったんでしょ?的なニュアンス)
すると鬼婆「強姦されてしょうがなく生んだのがお前」と言ってのける。
しかも「お前なんて産みたくなかった」もテンプレで言っちゃう。
15歳になり、照恵は手に職を付けて働きに行くが給料は全て鬼婆が取っていく上にケチ付ける。姉は愛想笑いを身に付けて心ここにあらずのようで弟は反発する。非行に走る弟にいつか一緒に出て行こうと優しく諭すのでした。
ある日帰ると鬼婆が引っ越しをしようとしていた。照恵の給料をあてにしていたのだろう。
照恵はたまらず鬼婆から自分の給料を奪い取り、泣きながら逃げた。追いかけてくる鬼婆を弟が止めて、照恵は逃げ切りそれから現在まで連絡一つしてないという訳でした。
照恵と娘は台湾にまで遺骨を探しに行くが、見つからずまた日本に帰ります。
父親は台湾国籍のままだったので日本の寺に預けられていたのでした。
そうして見つかった父の骨でしたが、父と鬼婆の出会いもわかりました。
父がレイプされた鬼婆を引き取って優しく接していたのでした。それから二人が夫婦になるにあたって、鬼婆が子供を産むのをすごく怖がっていたことから鬼婆の母もまた鬼婆だったことが伺えます。連鎖ですね。誰かが止めなければいけないという知恵は鬼婆にはなかったのでしょう。
照恵の娘は鬼婆の居場所を突き止めます。照恵は会いに行ってみることにしました。
父に連れ去られて行くあの日、鬼婆は「あなたなしでは生きられない」「怖い」「連れて行かないでくれ」と絶叫していた。その事がふと照恵の頭によぎったのだった。あなたなしではは自分なのか父なのかわからないが、鬼婆にもきっと弱い心があったのだろうとこの年になってやっとわかったような気がした照恵だったのでした。
さびれた漁村で「美容室豊子」を経営していた鬼婆。
カットをお願いし、櫛を通す時に鬼婆がつけた傷が見えました。鬼婆は照恵だと気が付きます。照恵はそのまま、昔母に髪を梳いた時に褒められて私も美容師になりたかったんです。なんて世間話に交えてサラリと自分の話をし、鬼婆は黙って聞くだけで二人とも何も言わずに出て行きます。最後に照恵は鬼婆に「いつまでもお元気で・・・」と言い立ち去ります。
鬼婆は店の外に出て、何も言わず照恵が去っていく後姿を見続けていました。
照恵は帰りのバスで娘に「あんな母でも愛されたかった」と愛を乞います。娘はそっと寄り添い、その後台湾に父の遺骨を埋めに行くのでした。
照恵は人生を懸けて負の連鎖を打ち切り、愛を乞う人から愛を与える人になる事に成功したのでした。母性もよく似た感じだよね。人は一番に母からの愛に苦悩する。
ああ・・・もう胸がいっぱい。
母の頭が足りなかったら、母に余裕が無かったら負の連鎖一直線しかないのは今も同じだけど、折檻はさすがにないと思いたい。
落ちてしまう度満点 ★★★★★