燕は戻ってこないの小説を読みました。
桐野夏生さんの、読み終えた後のどす黒いスッキリ感が好きです(褒めてます)。
漫画は沢山読んでます。
黒子のバスケ、少年のアビス、ダンスダンスダンス―ル、ドラゴン桜2(3回目)などなど。
今、読んでいるのは「クマ撃ちの女」「おーい!とんぼ」などなど。
クマ撃ちと、とんぼはかなりはまっているので記事にする予定です。
しかし今回は、気分を変えて小説の感想です!
もう桐野夏生というだけで、ハズレ無しと踏んで内容全然知らないまま読んでみました。
「燕は帰ってこない」小説の3行あらすじ
「やっちゃったな!おい!」という感じです。
「燕は帰ってこない」小説のあらすじとネタバレ
北海道の閉塞感が嫌になり、介護の仕事で貯めたお金を持って東京に出てきた「リキ」。
しかし持ってきたお金はすぐに無くなり、派遣で働くも本当に食べるのがやっと。
毎日弁当を持参するも、ゆで卵と野菜とかいいとこ豚コマ。
勇気を出して贅沢をするもコンビニのおにぎりという位貧乏を極めていた。
一緒に働く派遣の女はタイ人ハーフに貢ぐ。親が多めに借りて使い込んだ奨学金の返済も払っており、派遣だけでは生活できないので風俗にまで足を染めていた。
そんな時、一緒に働く女に「卵子のドナー」のバイトを紹介される。
20万~30万で海外に行って卵子を取るだけのお仕事。でもひと月位かかるので、仕事も辞めないといけない、でもいっそ仕事を辞めてちょっと休憩してもいいんじゃないかと思い始める。
卵子の面接に行ったリキは、ある夫婦の奥さんの顔に似ていたことから「代理母」を勧められる。
リキは吹っ掛ける。「1000万なら」と。
夫婦は金持ち。夫「草桶」は元バレリーナで現在は母とバレエ教室をしてる。
元々バレリーナと結婚していたも、今の妻悠子(デザイン会社経営)に出会い略奪婚される。
草桶と妻悠子は子供が居ない。不妊治療するも医師に諦めてくれと言われていました。
悠子は子どもはもういいと思っていたものの、草桶の遺伝子を残したい夫と義理母に押され、義理母がスポンサーになり代理母は成立。
しかし、リキは草桶が悠子と離婚し、籍を入れられ、挙句の果て生活まで共にしろだの言われていいかげんうっとおしくなる。
(当然といえば当然のような気がしますが、実際にやられると嫌になりますよね)
一緒に生活をするのは拒否したものの、勝手に実家のある北海道に帰り前彼と何度も何度も仲良ししてしまう(笑)
その前に草桶に勝手に北海道に帰ったことを咎められてイライラしてたから。
揚げ句の果てに周りにばれて、前彼は完全に逃げ腰で世間体が悪いのでもう北海道には帰らないでおこうと思うのだった。この辺かなり、田舎のどうしようもない閉塞感たっぷりなので面白い。
そして東京に帰ってからも女性風俗の男と何度も何度もしてしまう。
妊娠しやすくなる薬を飲んでいたことから当然妊娠してしまう。しかも双子。
黙っておくべきか、それとも告げて契約を破棄するべきか。
草桶は怒ったものの、誰の子でも俺の子だと言い張る。
そして妻の悠子は乗り気ではなく、子どもを引き取っても草桶とは再婚しないと言い出す。
グダグダとみんなの心情は劇的に変わりながらも、リキは悠子の友達、りりこ(絵師で金持ち)の家で一緒に暮す事に。
リキは女性風俗の男が、沖縄に帰りふらふらと生活している事を聞き、子どもの父はあんたかも知れないというとあっけらかんとしたものであった。
好きでもない男の子供を宿し、産むリスク。しかも双子ならリキが結婚する相手にもばれる。
1000万って安いんじゃないだろうか…とさえ思ってしまう。
草桶の義理母は、サラブレッドの金持ちなので、悠子の血筋(引きこもりの兄が居るだのパッとしない家系だの)が気に入らない。この辺も完全に見下していて、閉塞感ありありの狭い世界だけで生きている人特有のゲスさがあり面白い。
子どもが欲しいという夫婦に自分の子宮を貸す事は、いいことなんだけどどこか納得できない。そんな気持ちを抱えながらリキは出産します。
子どもの顔を見た途端、悠子の気持ちが変わり、途端に契約書を持って私たちが育てるとやってくるあたり、赤子の存在というのはどれほど大きなものなのかわかるよね。
私だって、明日から突然子供が居なくなったら、どうやって生活したらいいのか分からなくて死んでしまうかも。
そして生まれた息子と娘。遺伝子検査もせず育てるという草桶たち。嫁も掌返して子どもに夢中。自分のちっぽけな心情よりも目の前の子どもを見ると、パーッと気持ちが変わったんだろう。
リキも遺伝子検査もせず、娘だけ連れて黙って逃げる。多分沖縄の元女性風俗の男の元へふらりと行くんだろう。
リキは最後まで草桶夫婦にいいように利用され、最後までリキは契約を破りまくりなのが笑える。
燕は戻ってこないってタイトルがマッチしている。
「燕は帰ってこない」小説の感想
まずリキの置かれている立場が問題。
でもどこへもいけない、どこへも行かない、その場所で同じ人間関係だけで死んでいく人たちばかりの中で居ると、閉塞感が生まれる。
その閉塞感が感覚をおかしくするんじゃないかと思う。
元カレ(不倫相手)も、嫁にばれた時、嫁は「浮気されても受け入れる」という周りからの賞賛(!?)、周りの目を気にした対応が染みついているし、自分だけが助かる道を選んでいる。
東京に出たリキの事を悪者にし、自分が偉い(!?)ように持って行くしたたかさというか、後味の悪さというか、リキが戻ってこなくなるという事まで計算づくでやってるのがむかつくというか。
実際リキを誘ったのは、元カレなんだけど全部リキが悪いようにしているのがむかつく。
誰かのせいにしたい、誰かのせいにするのが当たり前になっているのが閉塞感のひとつなんだろう。
かといって、草桶家もなかなか。
結局どこに行っても、どんな暮らしをしても、自分ちが一番!それ以外は下等!ってのは人間変わらないんだろうな。
他人事ながら、登場人物全員に感情移入することができたと思えるのは、自分もどこかにそれぞれの想いがあるからなんでしょう。
ぐりとぐら(双子の子)がこれから、どんな暮らしをしようが笑って生きて行ってくれたらいいなと思う。
桐野夏生の本の感想:ハピネス・ロンリネス