小説 気持ちの埋め方

ゆりかごにそっと の感想と思う事

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赤ちゃんポストの名前で有名になった熊本の慈恵病院、蓮田太二さんの本。

なんとなく手に取ったら、完全に心を奪われてしまった。そのあとしばらく仕事が手につかなくて困ってしまったくらいに。

本書は、赤ちゃんポストがなぜ必要かということと、これまでの経緯や苦労(多分苦労とも思っていない)を筆跡し、次の赤ちゃんポストができることを望んでいる。

ちょっと偽善とか、グレーゾーンに踏み込みたくないわ、という人も知っておいて欲しい。

赤ちゃんポストができた時は、かなり衝撃的でしたよね。

でも、赤ちゃんが投げ込まれるというイメージの人も居るかも知れないけど、

本当は、育てられない人が赤ちゃんに幸せになって欲しいから、赤ちゃんポストに授けて育ててもらうもの。かかわった人全員に幸せが舞い降りるシステムだ。

赤ちゃんポストは衝撃的な名前だが、世の中の困っている妊婦に知らせるにはかなり情報が行き渡って、逆に良かったのではないでしょうか。

蓮田先生は、ベビークラッペ(赤ちゃんのゆりかご)であって赤ちゃんポストではない。ポストというと投げ込まれるイメージである。

とはいうけど、妊娠出産をする世代にはどうしてもキャッチーな文言が必要だ。

赤ちゃんのゆりかご、という名前だけで地味に活動していたら、助かる命も少なかったのではないだろうか。

ポストというと、芦田愛菜が演じた「ポスト」。これもお怒りになっておられる。

それでも、そういったメディアを利用して拡散されるのは良かったのではないだろうか。

なぜなら、今、この瞬間にどうしようかと悩んでいる妊婦にも、「こんなシステムがあるよ!」という声が少しでも届くからだ。

だいたい思うんだけど、女だけが妊娠して男に左右されて洗脳されて、女のせいにされてどうしようもなくなって、ひとりで生んで育てるってどうよ。

あれだけのえらい目をしといて、そのままお金も育児も家事も一人でこなせさせて、父親が逃げるってどういうことだよ。そうだよ、父親が逃げてるのが一番悪いんだよ。

1万歩ゆずって、女が子供を産んだ瞬間から秒速100キロで母親になっていくのに対して、男は時速5mmだとしよう。だとしても、無かったことにしてしまえる男に対して女は全責任を負わされて、セットで周りの人全てから完璧な母を求められ、少しでもできてないと世間から責められる。

世の中の99%の父親が、偉そうに言うだけのイクメン気取りだとしても、それでも戸籍は与える位父親に何の損があるというのだ。お前の結婚に傷が付くっていうなら、お前が結婚して幸せになれるとは思えないといってやりたい。

その昔、養子にあげるために産んだという女の子のブログを読んだことがある。あれは赤ちゃんポストができる前だったのか後だったのか。

探したけどそのブログは見つからなかったが、養子にあげるために産む。そしてその気持ちを綴った日記はなかなかに衝撃的だった。医者になる大学生との間にできて捨てられた女の子が、子供の幸せのためにと会社をちょっと休んで産んだ。退院してすぐに誰にも頼れないので自転車でその子の戸籍を登録しにいったのだ。「私にできる最後のこと」と言いながら。

コメントには養子を欲しがっている夫婦から「産む側の気持ちを書いてくれてありがとう」と沢山のエールがあったが、本人はその記録を最後に続きを書くことはなかった。忘れたいんだろう、忘れないとやりきれないんだろう。まあそんなことを思いつつ読み切った。

・・・・

ついでにこれも読んだ(結構はまってしまった)

話の中には不倫相手の子供を、病院にも行けず自宅出産してしまう人も居るが、電話助産師に相談しながら生みつつ、一方で自宅を特定しつつ救急車を呼んだら「なぜ救急車を呼んだ!」というお怒りをぶつけられたというエピソードもあるが、ええんよ。そのまま自宅出産して母親も子供も死んでしまったらどうするんだ。

というか自宅出産して、そのあとどうするんだ? 戸籍がないまま一生育てるわけにもいくまい(笑)だからいいんだよ。

大事なのは相談できる機関や人が、すぐ手に届くところにある。ということだ。

【目の前の命を助けるのに理由は必要なのか!?】

というこの一点で、多くの人が動いている。ということだ。

オバちゃん感動。

心が洗われる。

もちろん、簡単にはいかなかったけど、それでも国ではなく、田舎の個人病院が開設に踏み切ったというのはどうだろう? ふつうは国が一番に命を助ける施設を作るもんじゃないのか?

すごく反対されたものの、個人的にひそかに一番感動したのはその時の市長だ。

やりたいという人が居ても、許可が居る。その許可を得るというのは本当に大変だ。責任を取らされるかも知れない、もしかすると世間からも叩かれて市長を辞めさせられるかも知れない、それでも、許可した。国は許可しないのに、市長が許可した。

あまりそこには触れてないが、私はそこに一番感動した。

盛り上がって(?)勉強して、施設を作る動きもお金も当事者(したいと思ってる人)だから熱い思いでできる。

しかし市長は巻き込まれているだけなのだ。「これはダメ」と切って捨てることもできたかもしれないのに、許可した。これはかなり偉大な行動だと思う。

そして、赤ちゃんポストは熊本にしかない。なので遠くからでも来ている。

赤ちゃんポストは全国に必要だ。そして使わなければそれが一番いい。

けど困った時にすぐ近くにあるのと、ないのとでは格段に赤ちゃんの死亡率が減る!

・・・もう感動して涙出る。

というわけで2018年、無事に神戸のマナ助産院が赤ちゃんポストを開設。

これも医師が駐在していないとダメだとか、資金の面で問題があった。

個人的な意見でいえば、医師なんて後で呼べばいいじゃん。助産師なんだからたいていのことは経験あるでしょう。とか思うけど、難しいんだってー。目の前の命を救いたいという助産師が声を上げても、その命を捨てた方がいいっていうんだってー。  って聞こえるよね。反対されると。

資金面はクラウドファンディングで無事調達。いい時代になったなあ。

しかし、周りの住民からは「どこの人が来るかわからない」「そんな子供が来るなんて」なんて声もあるらしい。

お前はその子供たちに生かされる番だということがわからないらしい。

自分の事ばっかり言ってる間は、本当に幸せにはなれない。これはもう絶対だ。

目の前の命を、こうやって間接的に殺してるのと同じだ。なぜ、受け入れることができないのだ。おかしい。

本当に困っている人に、手を差し伸べることができないのは人間的におかしい。

そして匿名出産というシステムも編み出し、合法にした慈恵病院。

匿名で慈恵病院で出産して、事前に養子を貰う夫婦が一緒に出産を体験できるシステム。そして子供がある程度になるまで、本当の母親の名前を隠せるという方法だ。

子供には本当の母親ではないということを早くに伝える。

だが、乳幼児の時の愛着が、大人になってからの愛着障害をもたらせるからこそ大切に大切に自分の子供のように育てられる人に、子供を託すということだ。

捨てられる命ではなく、愛で生きる方法・・・。目の前の損得だけで動いている人は、こういったことが大切だとも思ってないだろう。

乳児院は2歳で離れ、また先生は入れ替わり、愛着を築くことが困難だ。だからこそ初めから養子で育てられることが一番なのだ。

たとえば、誰に育てられたとしてもそこに愛があればいいという事です。

円ブリオの事も是非一人でも多くの人に知って欲しい。

薬師丸ひろ子で、慈恵病院田尻さんドラマがあります。

テレビ未来遺産 こうのとりのゆりかご~「赤ちゃんポスト」の6年間と救われた92の命の未来~

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